コラム

フライトおもしろ話 @ 1998.11.10
  飛行機を操縦すると頭の回転が鈍くなるって本当?

人にもよりますが本当です。
空の上に行くと何しろすることが多いのです。まず機体を安定させる仕事です。これは主に外の水平線や地平線を基準にしたり計器(水平儀)を見て機体を安定させます。そして外の地形とチャート(地図)を見ながら現在地を認識し飛行計画を見て方向指示計器(VORなど)を合わせ目的地への方向、高度、速度をコントロールし山や障害物、他の飛行機に衝突しないか見張りをします。そしてそれに適時適切な場所で管制と交信をします。その際、管制と他の飛行機との交信も聞こえますがこれも聞いていて他の飛行機が現在どこにいて何をしているかを理解して危険度の予測をしていなければなりません。それから機長として他の搭乗員の健康状態なども把握していなければなりません。
主に見ている計器は水平儀、速度計、高度計、方向指示器、昇降計、回転計そして燃料計その他に油圧計、油温計、燃圧計、時計など多くあります。
そして、交信する管制の種類はAITS(飛行場気象案内これは聞くだけ)タワーかレディオ(管制塔)、TCAやレーダー、コントロール、インフォメーション(AEIS)などその都度、周波数を変えて交信しなければなりません。


まさに、空の上では目で計器や地図、プランを見ながら外を見て脳に送り、三半規管でゆれや傾きを感じ脳に伝え、手や足で飛行機をコントロールし、耳で管制との交信を脳に伝え応答を口に伝えるという様に、脳はいくつもの仕事を整理しながら同時に実行するというようなマルチタスクをやっているわけです。
また、一万フィート(約3千メートル)以上の高々度を長時間飛行していると空気が薄いので酸素不足になり脳の細胞の働きが鈍ってきます。ですから一万フィート以上は30分以上を飛行する場合は酸素供給が必要とされています。
また、それらの要素に霧やもや雲などによって視界が悪くなったり、乱気流による揺れが加わるとその操縦に倍以上のエネルギーを使うことになります。


飛行中この様な悪条件が加わると長時間飛行した時などしだいにパニック状態になり易くなります。そこまでならないにしても 通常の場合でも脳の働きがかなり鈍くなります。そして北に飛ばなければ行けないところを180度間違え南に向かっていたなど、単純なミスが起きやすいのです。その場合、なかなか自分では気づかないことが多いのです。 試しに簡単な足し算引き算をしてみてなかなか計算できず面倒に思えたら要注意です。
これが本当の「うわのそら」状態です。


この状態にならないためには体調維持が不可欠、前の日は睡眠不足にならぬ様、早めに寝ることが肝心です。
これらを回復するには、許す限り酸素の濃い高度まで下降し視界良好なところを選ぶ、なるべく揺れや危険の少ない海上飛行にする、思い切り深呼吸をするなど回避操作も必要となります。



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